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パテック フィリップの2025年発表モデルを振り返り!

2025年06月03日

時計専門誌『クロノス日本版』編集部が取材した、時計業界の新作見本市ウォッチズ&ワンダーズ2025。「外装革命」として特集した本誌でのこの取材記事を!

今回は、パテック フィリップスーパーコピー代引き 激安お客様に提供しますの発表モデルを振り返り。例年に比べて控えめながら、いずれも抜けのない、同社の発表モデルとは?

老舗のパテック フィリップも例外ではなく、基本的には既存モデルのコスメティックチェンジに終始した。とはいえ、ドレスウォッチを中心とした新作群は相変わらず圧巻だ。とりわけ新しいブレスレットを備えた「ゴールデン・エリプス」は、ドレスウォッチの方向性を模索する他社に、大きな影響を与えるに違いにない。

外装に注力する本年、白眉は「ゴールデン・エリプス」
パテック フィリップ ゴールデン・エリプス
パテック フィリップ「ゴールデン・エリプス」Ref.5738/1
一見、ミラネーゼ風のブレスレットを合わせた新作。サイズ調整のためにブレスをカットする必要がないのは朗報だ。コマ数を増やすことで、ミラネーゼのようなウネウネした感触を再現している。価格は高いが、内外装の仕上げは比類ない。自動巻き(Cal.240)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KRGケース(縦39.5×横34.5mm)。3気圧防水。951万円(税込み)。

ウォッチズ&ワンダーズ 2024の会期中、パテック フィリップの関係者はスイスのメディアに「今までの新作の在り方が異常だった」と明言した。これは同社の見解を反映したものに違いなく、果たしてパテック フィリップの新作は、今までに比べて控えめだった。とはいえ、外装の完成度を高める同社だけあって、どのプロダクトも抜けがない。

地味だが目を引いたのは、新しいブレスレットが備わった「ゴールデン・エリプス」だ。一見ミラネーゼ風だが、これは361個のコマを連結させたもの。そのため、ミラネーゼ風でありながらも、コマを外してサイズ調整ができ、社内で「ヴィクトリー」と呼ばれるように、V字状のリンクが連なっている。パテック フィリップで開発責任者を務めるフィリップ・バラは「パテック フィリップのブレスレットを製作する、フォルツハイムのウェレンドルフから提案があった」とのこと。ネジでリンク調整ができるにもかかわらず、そのしっとりした装着感はミラネーゼに比肩する。またリンクが大きいため、カジュアルな服装にも似合うだろう。バラが「どの服装にも合うスタイル」と強調したのは納得だ。

「ワールドタイム」と「年次カレンダー」にも注目
パテック フィリップ 2024年新作

(左)パテック フィリップ「ワールドタイム」Ref.5330
2023年に《ウォッチアート・グランド・エキシビション》で発表されたポインターデイト付きワールドタイムのレギュラーモデル版。日付変更線に対応するカレンダー付きワールドタイマーはかなり複雑だが、クリック感のある、しかし軽快な操作感は残された。日付表示を加えたにもかかわらず、視認性も相変わらず良好だ。注目すべきはポインターデイト針。サファイアクリスタルでは納得できる仕上げが得られなかったため、あえて有機ガラスで成形される。自動巻き(Cal.240HU C)。37石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWGケース(直径40mm、厚さ11.57mm)。3気圧防水。1213万円(税込み)。
(右)パテック フィリップ「レトログラード日付表示針付永久カレンダー、希少なハンドクラフト」Ref.5160/500
既存モデルの色違い。ケースを得意とするパテック フィリップだけあって、裏蓋のハンターケースは極めて精密な感触を持つ。また、外装の彫金から黒の彩色を省いた結果、18KWGモデルに比べて、時計の押し出しは抑えられた。ベースムーブメントは最新のCal.26-330に変更。自動巻き(Cal.26330 S QR)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRGケース(直径38mm、厚さ11.81mm)。3気圧防水。3199万円(税込み)。

昨年日本で開催された《ウォッチアート・グランド・エキシビション 東京(2023)》。ここで発表された日付付きの「ワールドタイム」もレギュラー化された。新たに製作されたカーボンパターンの文字盤は好みが分かれるだろうが、視認性は悪くない。

(左)パテック フィリップ「年次カレンダー」Ref.5396
5396の素材違い。ブルーグレーの文字盤も0.26ctのバゲットカットダイヤモンドをあしらったインデックスも従来に同じ。しかし、白系に統一された結果、時計のまとまりは明らかに改善された。上手いのは、インデックスに用いたダイヤモンドの固定方法。上下のみを爪で支えるのはロレックスなどに同じだが、下の台座をギリギリまで絞ることで、その存在を感じさせない。非常に洗練されたドレスウォッチだ。自動巻き(Cal.26-330 S QA LU 24H)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(直径38.5mm、厚さ11.2mm)。3気圧防水。1006万円(税込み)。

(右)パテック フィリップ「インライン永久カレンダー」Ref.5236P
傑作5236の文字盤違い。高い視認性を実現したのは、極めて大きなカレンダーディスク。しかし、曜日と月表示ディスクを支える軸をベアリング保持に改め、耐衝撃機構を加えることで実用性を高めた。視認性を追求する、今のパテック フィリップならではのモデルだ。また、搭載するムーブメントも、従来の31系に比べて、主ゼンマイのトルクを20%増加させている。11.07mmというケース厚も妥当である。自動巻き(Cal.31-260 PS QL)。51石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。Ptケース(直径41.3mm、厚さ11.07mm)。3気圧防水。2239万円(税込み)。

個人的に評価したいのは「年次カレンダー 5396」に加わった、18KWGにバゲットカットのダイヤモンドインデックスをあしらったモデルだ。本作の発表に伴い18KRGのダイヤモンドインデックスモデルはディスコン。通常の文字盤に比べてインデックスはかなり短いが、日付表示とインデックスの長さがそろった結果、デザインのバランスは明らかに改善された。デザインだけを言えば本作は5396のベストではないか。

意外な新作モデル

パテック フィリップ「ノーチラス フライバック・クロノグラフ」Ref.5980/6
従来の仕様違いと思いきや、スリムな造形を得たモデル。ベゼルをごくわずかに絞ることで、ノーチラスの複雑系に見られる重厚さを少し抑えた。大きな開口部と、明るいブルーグレー・オパーリン文字盤により、時計の印象はかなり異なる。普通、ケースが変わるとリファレンスは変更になるはずだが、本作は従来に同じ。18KWGケースのため、かなり重い時計だが、装着感は想像よりも悪くない。自動巻き(Cal.CH 28-520 C/522)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KWGケース(直径[10-4時方向]40.5mm、厚さ12.2mm)。3気圧防水。1250万円(税込み)。

意外だったのは、「ノーチラス フライバック・クロノグラフ」である。既存モデルの色違いと思いきや、ベゼルをわずかに絞ることで、文字盤の開口部を広げている。これは細いベゼルを好むティエリー・スターンの趣味を反映させたものだろう。そのさじ加減は絶妙で、ノーチラスの骨太な造形を邪魔しない程度に、わずかにスリムに見せている。重い18KWGのため、5711や5712のような装着感は望めないが、太いストラップのおかげで着け心地は決して悪くない。

抜けのないパテック フィリップの2024年発表モデル

パテック フィリップ「アラーム・トラベルタイム」Ref.5520
5520Pに追加されたバリエーション。18KRGケースに、加熱処理した18KWG製のプッシュボタンチューブを合わせたモデル。ミニットリピーターよろしく、ゴングで音を鳴らすアラームは従来に同じ。安全機構が設けられているため、誤操作で壊す心配は少ないだろう。非常に優れたモデル。しかし、あえてグリーンに改められた針とインデックスの夜光は、筆者の好みではない。自動巻き(Cal.AL 30-660 S C FUS)。52石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約52時間。18KRG×18KWGケース(直径42.2mm、厚さ11.6mm)。3気圧防水。4104万円(税込み)。

現行のパテック フィリップに関して、筆者は強いて言うことがない。2010年代の後半以降、ケースの磨きはさらに改善されたし、PVDを用いたブルーグレー文字盤の発色も群を抜いて良質だ。またラッカーによるグラデーション文字盤も境界線が全く見えない。セラミックスのベアリングを使っているにもかかわらずローター音は静かだし、シリコン製ヒゲゼンマイのおかげで、耐磁性にも優れている。強いて気になる点を挙げれば、デニム調のパターンが施されたレザーストラップぐらいだろうか。デニムに見えてレザーという驚きはあるし、この素材ならば、ゴールドケースは傷めないだろう。ただし、筆者の好みではない。

さておき、今年も総じて抜けのなかったパテック フィリップ。今年の後半にも大いに期待したい。

(左)パテック フィリップ「アクアノート・トラベルタイム」Ref.5269
個人的には非常に引かれるモデル。旧作から貴石を省いただけだが、結果としてまとまりのあるトラベルウォッチとなった。時針の単独修正機能や、6時位置にあるホームタイムの昼夜表示も実用的。ただし「HOME」の表記は蛇足だろう。使える旅時計を探す人には申し分ない。クォーツ(Cal.E 23-250 SFUS 24H)。18KRGケース(直径[10-4時方向]38.8mm、厚さ8.77mm)。3気圧防水。560万円(税込み)。

(右)パテック フィリップ「アクアノート・トラベルタイム」Ref.5164
2011年に発表された5164の素材違い。併せてムーブメントが最新のCal.26-330 S C FUSに改められた。素材の変更にもかかわらず、装着感は秀逸だ。しかし、今回からアクアノート全般の防水性能が3気圧に下げられたのは惜しまれる。自動巻き(Cal.26-330 S CFUS)。29石。2万8800振動/ 時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(直径[10-4時方向]40.8mm、厚さ10.2mm)。3気圧防水。998万円(税込み)。

モーリス・ラクロアの2025年人気ランキング発表!

2025年06月03日

ブランドのデータに基づき、モーリス・ラクロアの2025年人気ランキングTOP5を発表。「アイコン」コレクションが高い人気を誇る同社だが、アイコンはやはり今年も強かった。

2024年モーリス・ラクロア人気ランキングTOP5
モーリス・ラクロアは、1975年に誕生したスイスの高級時計ブランドだ。創業当初は他社の時計を受託生産していたが、やがて自社ブランドで時計の製造を開始。現代では機械式時計らしい動きを楽しむことができる「マスターピース」やダイバーズウォッチの「ポントス」などのコレクションを展開している。中でも特に高い人気を誇るのが、「アイコン」だ。1990年代に登場した「カリプソ」のデザインコードを取り入れつつ、現代的にアップデートされたアイコンは、6つのタブを配したベゼルやブレスレット一体型のケース構造によって、文字通りモーリス・ラクロアを象徴する“アイコン”となり、大きな成功を収めた。今回は、そんな同社の2024年人気ランキングを発表する。

第5位:「アイコン オートマティック スケルトン」Ref.AI6007-SS002-030-1

モーリス・ラクロア「アイコン オートマティック スケルトン」Ref.AI6007-SS002-030-1
ムーブメントの構造を詳らかにしたスケルトンウォッチ。アイコンとしての特徴をそのままに、ダイナミックなムーブメントの造形を楽しむことができる。自動巻き(Cal.ML135)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。人気のオーデマピゲ 時計 コピー Nランク 代金引換を激安SSケース(直径39mm、厚さ11mm)。20気圧防水。58万6300円(税込み)。
モーリス・ラクロアを代表するコレクション、アイコンの中でも一際強い個性を放つモデル。サファイアクリスタル製のダイアルを採用することで、内部のムーブメントをダイアル側から鑑賞することが可能な構造を持つ。ムーブメントの地板には曲線を多く取り入れたスケルトン加工が施され、その隙間からテンプの動きや主ゼンマイが巻き締められる様子を楽しむことが可能だ。スケルトンウォッチは、そのデザイン性ゆえに視認性が損なわれてしまうことも少なくないが、本作では蓄光塗料を塗布したインデックスが配され、しっかりと時刻が読み取れるように配慮されている。シースルーバックを採用しているため、裏蓋側からもムーブメントを鑑賞することが可能だ。

ケースは直径39mmの控えめなサイズ感。アイコンの特徴である6つのタブが配されたベゼルやシャープなブレスレット一体型のケースなど、オンオフ問わず着用しやすいデザインであることも魅力だ。防水性は20気圧を確保しているため、アウトドアでも気兼ねなく使用することができる。

第4位:「アイコン クォーツ デイト 40mm」Ref.AI1108-SS002-430-1
モーリス・ラクロア アイコン
モーリス・ラクロア「アイコン クォーツ デイト 40mm」Ref.AI1108-SS002-430-1
扱いやすいクォーツムーブメントを搭載したモデル。サンブラッシュ仕上げのダイアルに細身のインデックスを組み合わせ、上品な印象に仕上げている。クォーツ。SSケース(直径40mm、厚さ9mm)。10気圧防水。16万8300円(税込み)。
クォーツムーブメントを搭載するアイコン。ブルーのサンブラッシュ仕上げのダイアルには、アイコンの特徴でもあるグリッド状のパターンが施されておらず、さらに細めのインデックスを採用しているため、ややドレッシーな印象。時分針にはスーパールミノバが塗布され、暗所での時刻確認に役立つ。3時位置には日付表示が配され、実用性も十分だ。

ケースの直径は40mm。クォーツムーブメントを搭載しているため、厚さ9mmと、より手首に馴染みやすい薄さであることも魅力のひとつ。ねじ込み式リュウズを備え、10気圧防水を達成している。

クォーツウォッチゆえに、機械式に比べて時刻調整の手間がかからないこと、理論上耐衝撃性に優れることなど、実用的な特徴を備えている。アイコンのクォーツモデルは、本作のようなシンプルな3針モデルのほか、クロノグラフモデルや豊富なダイアルカラーバリエーション、海洋プラスチックをアップサイクルした「アイコン #TIDE」など、ユーザーの好みに応じたラインナップを展開している点も魅力だ。

第3位:「アイコン オートマティック デイト 42mm」Ref.AI6008-SS002-330-1
モーリス・ラクロア 人気 ランキング
モーリス・ラクロア「アイコン オートマティック デイト 42mm」Ref.AI6008-SS002-330-1
数あるアイコンの中でも特にベーシックなデザインを持つモデル。落ち着きのあるブラックダイアルは、ビジネスシーンでも使いやすい。自動巻き(Cal.ML115)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径42mm、厚さ11mm)。20気圧防水。34万6500円(税込み)。

直径42mmのケースを採用した、ベーシックな自動巻きのアイコン。ブラックのダイアルが、ビジネスシーンにもふさわしいシックな印象を作り出す。ダイアルに施されているグリッド状のパターンはクル・ド・パリ装飾であり、ダイアルに立体的な表情を与えている。インデックスはバータイプで統一し、3時、6時、9時、12時位置をダブルとすることで、判読性を高めている。時分針は細身のペンシル型。蓄光塗料を塗布することで、暗所での視認性を確保している。

ケースはヘアラインとポリッシュに磨き分けられ、メリハリの利いたデザイン。手首を動かすたびにポリッシュ部が輝く様子を楽しむことができる。ケースとブレスレットが一体となった構造のため、滑らかな連続性のあるデザインも魅力だ。

ムーブメントは信頼性の高い汎用機をベースとしたCal.ML115を搭載する。シースルーバックを採用しているため、ローターやテンプの動き、ペルラージュ装飾とコリマソン装飾、コート・ド・ジュネーブ装飾を鑑賞することが可能だ。

第2位:「アイコン オートマティック デイト 42mm」Ref.AI6008-SS002-430-1
モーリス・ラクロア 人気 ランキング
モーリス・ラクロア「アイコン オートマティック デイト 42mm」Ref.AI6008-SS002-430-1
第3位のモデルのカラーバリエーション。ブラックもブルーも、どちらもシーンを選ばない万能なカラーだ。汎用性の高いアイコンのキャラクターが反映された結果だろうか。自動巻き(Cal.ML115)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径42mm、厚さ11mm)。20気圧防水。34万6500円(税込み)。
第3位にランクインしたアイコン オートマティック デイト 42mmのカラーバリエーションモデル。やはり定番モデルは根強い人気を獲得しているようだ。本作は、爽やかなブルーダイアルを採用しており、第3位のモデルに比べ、よりカジュアルにも使いやすい。クル・ド・パリ装飾のダイアルや6つのタブが配されたポリッシュとヘアラインのケース、ムーブメントなどの基本的な特徴は、先述した通りだ。防水性は20気圧を備えており、悪天候時にも特に気にかけることなく着用することができる。

コレクションに共通する仕様だが、ブレスレットにはイージーチェンジャブルシステムが搭載されており、背面に配されたレバーを操作することによって、簡単にブレスレットをケースから分離することができる。サイズの合うストラップを買いそろえることで、その日の気分やシーンに合わせて簡単にベルトを交換することが可能だ。ブランド純正でレザーやラバーなど種類豊富なベルトが発売されている。

第1位:「アイコン マニュアル クラブジャパンエディション」Ref.AI7007-SS00E-430-C

モーリス・ラクロア「アイコン マニュアル クラブジャパンエディション」Ref.AI7007-SS00E-430-C
ML CLUB ジャパンの創設者、中澤浩司氏とのコラボレーションによって実現した、手巻きのアイコン。ダイアルの装飾など、細部にまで手が加えられている。手巻き(Cal.ML145)。18石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径39mm、厚さ10mm)。10気圧防水。世界限定500本。36万4100円(税込み)。
堂々1位に輝いたのは、2024年12月に発売されたばかりの「アイコン マニュアル クラブジャパンエディション」だ。本作はモーリス・ラクロアの公式ウォッチクラブであるML CLUB ジャパンの創設者、中澤浩司氏とのコラボレーションによる数量限定モデルだ。最大の特徴は、手巻きムーブメントを搭載している点にある。これによって、日々の主ゼンマイの巻き上げを楽しむことが可能なのだ。

デザインは一見して既存の自動巻きモデルと同じように思えるが、ダイアル上のクル・ド・パリ装飾の高さが0.08mmから0.16mmへ変更され、より立体感のある表情を楽しむことができるようになった。加えてノンデイト仕様であるため、シンメトリーなレイアウトを有していることも特徴のひとつ。

ケースは、手巻きムーブメントを搭載することによって、自動巻きモデルから1mm薄い厚さ10mmを実現している。ベルトは、ステンレススティールブレスレットに加え、ブルーのレザーストラップが付属する。イージーチェンジャブルシステムによって、簡単に付け替えて楽しむことが可能だ。

ブライトリングの年間売り上げデータを基にした2025年の人気モデルTOP5を紹介する。

2025年06月03日

今回はメンズモデル編だ。「プロフェッショナルのための計器」を提供することを標榜し、特にクロノグラフを得意とするブライトリング。本年のランキングは、そんなクロノグラフ搭載モデルが独占することとなり、ブランドの強みとファンの期待が合致した結果であると言えるだろう。

第5位:ナビタイマー B01 クロノグラフ 41 ジャパン エディション
ブライトリング ナビタイマー
ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 41 ジャパン エディション」Ref.AB0139211C2A1
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41.0mm、厚さ13.6mm)。3気圧防水。日本限定。135万3000円(税込み)。
ストイックな印象もあるプロフェッショナル向けモデルをエレガントに仕立てた日本限定モデル「ナビタイマー B01 クロノグラフ 41 ジャパン エディション」が第5位にランクインした。

人気のブライトリングスーパーコピー 代引き専門店が1930年代より航空機向け計器を製造し、航空産業に貢献してきた歴史を色濃く反映しているのが「ナビタイマー」だ。平均速度や飛行距離、燃料消費量といった飛行中に必要な計算を可能とする回転計算尺を回転ベゼルに組み込んだモデルが代表的なコレクションで、というのもナビタイマーのファーストモデルが発表された1950年代は、現代のような利便性の高い計器は未発達。パイロットを補助する機能が豊富なナビタイマーは、アメリカのパイロット協会であるAOPAの公式時計として採用された歴史を持つのだ。このようにプロフェッショナル向けとして生まれたナビタイマーであるが、そのアイコニックなスタイリングや多機能かつ高性能であることの魅力により、広くファンに支持されるようになり、現在に至っている。

本作は、アイスブルーに仕上げられたマザー・オブ・パールをダイアルに用いてエレガントに仕立てた2024年発表の日本限定モデルだ。1本ずつ異なり、しかも有機的に変化するマザー・オブ・パールの表情とアイスブルーの色調が組み合わさり、航空機の窓から望む雲海や光り輝く雪原のような、爽やかな煌めきが与えられている。

第4位:クロノマット B01 42 ジャパン エディション
ブライトリング クロノマット 日本限定
ブライトリング「クロノマット B01 42 ジャパン エディション」Ref.AB0134101A1A1
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径42.0mm、厚さ15.1mm)。200m防水。日本限定。138万6000円(税込み)。
第4位は、「クロノマット」の日本限定モデルである「クロノマット B01 42 ジャパン エディション」がランクインした。クロノマットは、ブライトリングのコアコレクションかつ長年人気を集めてきたコレクションだ。現在のスタイリングとなったのは2020年であり、そのベースは1983年にイタリア空軍のアクロバットチーム「フレッチェ・トリコローリ」のために製造したモデルである。

2020年以前はケース径44mmなどと大型な傾向にあったが、このサイズ感は「スーパー クロノマット B01 44」に任せ、ケース径42mmへと改められた。これを機にブライトリングは、クロノマットを「オールパーパスウォッチ」として再定義し、プロフェッショナルな現場からカジュアル、スーツスタイルまで対応可能な機能とスタイリングを与えた。

日本限定モデルの本作は、現在のクロノマットの立ち位置が反映されたモデルである。ホワイトのマザー・オブ・パールを文字盤に用い、インダイアルをアンスラサイトとしてモノトーン調に仕立てている。落ち着いた色調ながら表情が変化するマザー・オブ・パールと、ゴールドカラーの“B”のロゴが、本作にエレガントさを加えている。一方、機能面は、スイス公式クロノメーター検定協会によるCOSCクロノメーターである自動巻きクロノグラフムーブメントCal.01を搭載しつつ200mの防水性能備えるなど、プロフェッショナル用モデルとして申し分のない完成度だ。

第3位:ナビタイマー B01 クロノグラフ 43
ブライトリング ナビタイマー B01 クロノグラフ 43
ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」Ref.AB0138241C1A1
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41.0mm、厚さ13.6mm)。3気圧防水。124万3000円(税込み)。
第3位に輝いたのは、アイスブルーカラーの「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」だ。現在のナビタイマーは2022年のリニューアルによって外装が見直され、より魅力を増している。ムーブメントは以前のモデルに引き続いてCal.01を搭載しつつ、文字盤とケースの立体感が増されたのがトピックスであった。文字盤は中央が膨らんだボンベダイアルとなり、回転ベゼルを内側がえぐられたコンベックス状とすることで高低差が与えられている。また、風防のドーム形状が強調され、ミドルケースを相対的に薄くして「古典味」が加えられた。AOPAの翼のロゴが、かつての名作同様に12時位置に改められた点も、古典味を醸し出すエッセンスとなっている。また、本作に組み合わされるブレスレットは、弓菅とケースの一体感を増して現代的に改良が加えられており、古典味と現代的なテイストが同居したモデルに仕上がっている。

2022年のリニューアルで、グリーンや、カッパー、そして本作のアイスブルーの文字盤色が追加されている。ストイックなプロフェッショナル用モデルであるナビタイマーの側面と、現代のファッションシーンに合わせたモダンでエレガントな面を兼ね備えたモデルが、本作と言えるだろう。

第2位:ナビタイマー B01 クロノグラフ 43
ブライトリング ナビタイマー B01 クロノグラフ 43
ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」Ref.AB0138211B1A1
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41.0mm、厚さ13.6mm)。3気圧防水。124万3000円(税込み)。
第2位に輝いたのは「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」のブラックモデルだ。ナビタイマーは現在、第5位にランクインしたケース径41mmモデルと、本作および第3位の43mmモデルに加えて、46mmモデルのラインナップが存在する。本作のブラックをベースにシルバーのインダイアルと回転計算尺を備えるカラーリングは、いずれのサイズにも用意されており、ブライトリングがこのカラーリングを主軸とし、ユーザーも「ナビタイマーといえば」とイメージしていることが、第2位という人気につながっているのだろう。

このブラックの文字盤は、2022年のリニューアルによりメッキ仕上げからラッカーによるペイントに改められている。以前のメッキ仕上げでは印字の精密さが魅力であったが、本作ではペイントであってもその精密さを維持ししており、ラッカーを用いることでブラックの発色が良くなり、魅力が増していることが注目点である。

第1位:ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート
ブライトリング ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート
ブライトリング「ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート」Ref.PB02302A1B1A1
手巻き(Cal.B02)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS×プラチナケース(直径41mm、厚さ13mm)。3気圧防水。日本限定200本。159万5000円(税込み)。
 第1位に輝いたのは、ナビタイマーの中でも特別な「コスモノート」の、日本限定モデルである「ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート」だ。コスモノートは、1962年5月24日にスコット・カーペンターがマーキュリー・アトラス7号で宇宙飛行する際に着用し、初めて宇宙を飛んだスイス製腕時計型クロノグラフであり、ブライトリングのみならず時計史に残るアイコンとなっている。その特徴は、宇宙の暗闇の中で昼夜を識別するために、通常のナビタイマーをベースに24時間表示に改められている点だ。

本作は、ブライトリング140周年の節目に発表された日本限定200本の特別なモデルである。文字盤をストラトス(成層圏の意)グレーとして、スコット・カーペンターの偉業を想起させるカラーリングに仕上げ、かつエイジングで焼けた風合いを思わせる蓄光塗料を施してヴィンテージテイストを加えている。さらに、プラチナ製ベゼルを組み合わせたことで特別感のある輝きが与えられている。

また、オリジナルモデル同様に手巻き式のクロノグラフムーブメントが搭載されている点もファンにはうれしいポイントである。搭載されるムーブメントのCal.B02は手巻き式のためローターを持たず、その機構と施された各種仕上げをケースバック側から鑑賞できる点は、本作の魅力のひとつだ。また、ケースバックにはマーキュリー・アトラス7号が飛行した日付と、“First Swiss wristwatch in space(宇宙で最初のスイス製腕時計)”というフレーズおよび、本作の希少性を示す“ONE OF 200”が刻まれている。

航空産業に大きく貢献してきたブライトリングのバックボーンと、その中で果たされた偉業をルーツとする本作が、本年の第1位となったのは必然であると言える。

時計好き垂涎の魅力的なアイテムがズラリ勢ぞろい。これは世界に誇るラインナップだ!

2025年05月14日

時計好きや著名人、コレクターの方々とHODINKEE編集部が時計について語り合う名物動画企画、Talking Watchesに久々の日本オリジナル企画が帰ってきた。今回の相手は、ヴィンテージウォッチ好きなら知らない人はいないだろう、磯貝吉秀氏だ。兄の建文氏が起こしたシェルマンを世界屈指のヴィンテージウォッチディーラーに育て上げた人物であり、フィリップ・デュフォーを日本に紹介し、独立時計師ブームの火付け役としても知られる。言うなれば日本を代表する時計界のレジェンドだ。基本的にビジネスとしてヴィンテージウォッチを扱っていたため、自身ではそれほど時計はコレクションしていないとのことだったが、本企画で紹介してくれたものはどれもがミュージアムにあってもおかしくないほどの素晴らしい逸品ばかりだった。

もともとはロボットなどを扱う商社マンだった磯貝氏。ふたりの兄が立ち上げたシェルマンに途中から参画するようになるが、動画ではどのようなきっかけでヴィンテージウォッチの世界、時計の世界に足を踏み入れるようになったのか、ヴィンテージウォッチに引かれたきっかけ、そしてその素晴らしさについて情熱的に語ってくれた。さらには独立時計師たちとの出会い、オリジナルウォッチ製作の裏話など、動画ではとても興味深いエピソードを披露している。また本稿では、動画では紹介しきれなかった磯貝氏自慢のコレクションの詳細についてまとめているので、ぜひ最後までチェックして欲しい。

パテック フィリップ Ref.3428 トロピカル(Cal.27-460搭載)

“パテック フィリップのトロピカル”といえば、カルティエ時計コピー 代引き専門店多くの時計好きはRef.2526を思い浮かべるかもしれない。Ref.2526は1953年に誕生したパテック フィリップ初の自社製自動巻きCal.12-600ATを搭載したリファレンスのひとつで、エナメルダイヤルを用いて湿気などがもたらす劣化や日差しなどによる経年変化を防ぎ、半永久的にその美しさを保たせようと考案された名品だ。本作はその後継機として作られた、Cal.27-460を搭載するRef.3428のトロピカルである。

Ref.2526が有名だが、製造数はRef.3428のほうがより少なく希少なモデルと言える。一見するとRef.3428もRef.2526も同じように見えるため、ムーブメントが違うだけのように思われがちだが、その違い(Cal.12-600ATは厚さ5.4mm、対するCal.27-460は厚さ4.6mm)により、Ref.3428はRef.2526よりもケースが薄くなっている。

磯貝氏のRef.3428は、エナメルダイヤルに傷やクラックなども見当たらず、ケースはエッジを残しつつトロピカル独特の柔らかな曲線美が同居した極上のコンディションを保っている。磯貝氏はこのトロピカルのどんなところに引かれたのか? 動画のなかでその理由が語られている。

パテック フィリップ Ref.1593 アワーグラス

この時計はパテック フィリップのフレアードケースモデルのひとつ、Ref.1593の18Kローズゴールドモデルだ。カラトラバの代表格をRef.96とするならば、フレアードにおいてはこのRef.1593がそれに当たる。上下に曲線を描いたケースが特徴で、“砂時計”をほうふつとさせるようなケースシェイプを持つことから“アワーグラス”とも呼ばれている。


アワーグラスのような角の立ったケースを持つモデルは、エッジが立っていたとしても磨かれていて本来のフォルムではなくなっていたり、丸くなってしまっているという場合がほとんど。だが、磯貝氏の個体はラグの部分など本来は面取りがかすかに施されているディテールも残されている。加えて、風防もアールの強い形状のため、ぶつけて欠けていたり、あとからプラスチック製のものに変えられてしまっていることが圧倒的に多いのだが、聞けばこの風防もガラス製のオリジナル。ケースから風防、文字盤や針に至るまでオールオリジナルで素晴らしいコンディションをキープしている。

パテック フィリップ Ref.3445

磯貝氏がトロピカルと並んでお気に入りのモデルだと話すのが、このRef.3445だ。日付け表示を備えたCal.27-460Mを搭載したモデルで、実用機としての人気が高いパテックとして知られる。

本作における最初の見どころはダイヤルである。市場に出回っているRef.3445の多くは文字盤外周のミニッツインデックスがドット、いわゆるパールドロップスタイルなのだが、本作は初期型ダイヤルを備えており、ミニッツインデックスが細いバーのプリントになっている。1960〜61年というわずかな期間だけ作られたものが初期型と言われており、“PPクラウン”と呼ばれるトップが“qp”という特殊なデザインのリューズを採用しているのも初期型を示す特徴。


初の自社製自動巻きであるCal.12-600ATと初期のCal.27-460を搭載するモデルにこのPPクラウンが採用されているのだが、オーバーホールの際に消耗品として交換されてしまうことが多く、PPクラウンは珍しいのだ。また逆にムーブメントは初期の年代であっても、ダイヤルが交換されている場合も少なくないようで、初期のディテールを残している本作はきわめて希少な存在だ。

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ロレックス Ref.4220 オイスター スピードキング 

こちらはロレックスのRef.4220 オイスター スピードキングである。文字盤や針のデザインバリエーションも豊富なヴィンテージロレックス。そのなかでもスピードキングは比較的数の多いモデルだが、驚くべきはそのコンディションだ。


磯貝氏のコレクションはどれも素晴らしいコンディションのものばかりではあるが、これはそのなかでもトップクラス。すべてフルオリジナルのミントコンディションで、貴重なオリジナルのSS製エクステンションリベットブレスはもちろん、リューズや風防も製造時のオリジナルのものが残っている。経年の傷などは見られるが、ケースも研磨された様子はなく、文字盤に至っては市場に出回っているものとは比較にならないほど奇跡的な状態をキープ。オリジナルの姿を今に伝える貴重な1本と言って間違いない。

スヴェン・アンデルセン ミニッツリピーター・パーペチュアルカレンダー(ヘンリー・バークス)

著名な独立時計師のひとり、スヴェン・アンデルセン氏がかつて製作したミニッツリピーター・パーペチュアルカレンダー(正確にはパーペチュアルカレンダー・ムーンフェイズ・ミニッツリピーター)。ムーブメントは最高級のヴィンテージ手巻きミニッツリピーターキャリバーをベースに、自らが開発したレトログラード式デイトインジケーターを採用したパーペチュアルカレンダーモジュールを付加したものを搭載しており、これは彼が製作した作品のなかでは初期のものと言われる。

磯貝氏が手に入れたのは今から30年以上前で、この時計は当時2万4000ドルから2万6000ドルほどで手にできたという。ちなみに当時はパテック フィリップのRef.96(カラトラバ)が1700ドル、トロピカルが3600ドル、Ref.3450(永久カレンダー)も6000ドルほどで手に入れることができたといい、永久カレンダー クロノグラフのRef.2499でさえ2万ドル前後で入手できたそうだ。そのため非常に高い買い物であったことが印象に残っていると語ってくれた。なお、今回紹介していただいたコレクションのなかで特に磯貝氏お気に入りの1本がこの時計だ。


注目したい点はふたつ。ひとつはダイヤルにスヴェン・アンデルセン氏、および自身のブランド名であるアンデルセン・ジュネーブのシグネチャーがない代わりに、文字盤6時側の外周に“HENRY BIRKS(ヘンリー・バークス)”の文字があしらわれている点。ヘンリー・バークスとは、カナダのモントリオールに設立された高級ジュエラーだ。

アンデルセン・ジュネーブ銘でも本作と同様の機能を備えたモデルが製作されるが、それとは異なるディテールをいくつも持っているところがふたつ目のポイント。アンデルセン・ジュネーブ銘のミニッツリピーター・パーペチュアルカレンダーの場合、文字盤3時位置の月表示インダイヤルにうるう年表示が設けられているが本作では見当たらない。さらにミニッツリピーターのスライドレバーも、通常はカレンダー調整ボタンがあるケース9時側のケースバック寄りに設けられているが、本作ではケース3時側に設けられており、リューズも3時位置ではなく1時半位置に設けられている。こうした違いは、使われているベースキャリバーの種類によるもののようだ。

スヴェン・アンデルセン スモーレストカレンダーウォッチ(ユニークピース)

こちらもスヴェン・アンデルセン氏の作品のひとつで、その名のとおり、1989年に世界最小のカレンダーウォッチとしてギネスブックにも掲載されたもの(当時)として知られている。18Kイエローゴールド製のミドルケースに18Kホワイトゴールドのラグを持つケースは縦24mm、幅10mm、高さ7.5mm。そしてカレンダーモジュールの厚さはわずか1.4mmしかない。快挙を伝えた当時の記事によれば、カレンダー機構は6つの歯車で構成され、3つあるバネのひとつあたりの厚さは0.06mm、さらに地板の厚みは0.4mm、さらに文字盤の厚みは0.3mmで、地板と文字盤のふたつのあいだにあるわずか0.7mmの空間にカレンダー機構を追加するという驚くべき構造を持つことが明かされていた。ムーブメントは小さすぎるがゆえ、巻き上げリューズはケース裏側に取り付けられている。

このスモーレストカレンダーウォッチに搭載されているのはヨーロピアン・ウォッチ・アンド・クロック・カンパニー(European Watch and Clock Company Inc、通称EWC)製のムーブメントだ。磯貝氏曰く、カルティエからの注文で作られたものの、結局製品としては日の目を見ることなく眠っていたムーブメントをアンデルセン氏が手に入れてよみがえらせたのだという。本作は、彼の工房で展示されていたムーブメントに磯貝氏が惚れ込み譲ってもらったというだけでなく、アンデルセン氏と一緒にケースや文字盤などをデザインしてケーシングしてもらったというユニークピースなのだ。ムーブメントはEWC銘のものとカルティエ銘のものがあったそうだが、EWC銘のものは磯貝氏が、カルティエ銘のものはあるコレクターの手に渡ったそうだ。なおこのとき体験した、ひとつの時計を作っていくという感動と興奮が、のちのシェルマンオリジナルウォッチ製作の原点になったと磯貝氏は話す。

実はこのスモーレストカレンダーウォッチだが、のちにスヴェン・アンデルセン氏は残された異なるムーブメントを用いていくつか製品化していた。スイス・チューリッヒにあるスイス最古の時計宝飾店、ベイヤー・クロノメトリーを通じて4本が販売されたあと、テオドール・ベイヤー(先代の同店代表)からベイヤー時計博物館の展示用に欲しいというオファーを受けて、アンデルセン氏はバラバラになっていたプロトタイプを組み上げた。テオドール・ベイヤーはそれを受け取る前に亡くなってしまったが、2013年に息子のルネ・ベイヤー氏が同時計博物館への寄贈品として受け取ったと、同店のブログには記されている。

シェルマンオリジナル グランドコンプリケーション クラシック

これは磯貝氏がかつて代表を務めていた時代に手がけたシェルマンオリジナルのグランドコンプリケーション クラシックのブレスレットモデル。永久カレンダーにムーンフェイズ、ミニッツリピーター、そしてスプリットセコンドクロノグラフという複雑機構をクォーツムーブメントを使用することで実現した。本作が完成した1996年当時、美術工芸品のようなグランドコンプリケーションウォッチをクォーツムーブメントで作り、カレンダーも合わせてすべての機能を心おきなく使おうという実用志向の発想自体が斬新だったそうだ(機械式のグランドコンプリケーションウォッチはカレンダーが合っていないのが当たり前で実用とはほど遠いものだったとのこと)。


ラ・ショー・ド・フォン国際時計博物館。Image courtesy: Musée international d'horlogerie, La Chaux-de-Fonds, Suisse. Photo MIH ©

世界的にもその試みが高く評価され、発表翌年の1997年にはスイスのラ・ショー・ド・フォンにある国際時計博物館の永久展示品に認定された。ヴィンテージに見せられた磯貝氏がなぜクォーツムーブメントのこのモデルを作ったのか、その理由については動画のなかで語っているのでそちらをご覧いただきたい。今でこそ、日本のショップや小さなインディペンデントブランドが時計を手がけ、世界的に評価されることは珍しくなくなりつつあるが、そうした大手に寄らないユニークな国産ウォッチメイキングの道を切り開いた存在であることは間違いないだろう。

シェルマンオリジナル ワールドタイムミニッツリピーター クロワゾネダイヤル

こちらもシェルマンオリジナルウォッチのひとつで、2002年に作られたワールドタイムミニッツリピーターのクロワゾネダイヤル。グランドコンプリケーション クラシック以上にディテールにこだわり、クォーツウォッチでありながらダイヤルにはクロワゾネを使用している。クロワゾネダイヤルは時計愛好家からの人気が非常に高いものの、繊細で割れやすく実用に向くものではない。そんなクロワゾネを日常のなかでも楽しみたいという思いから作られたもので、その美しさと割れないということを追求して出来上がった渾身の作品だという。ブルーを基調とした本作のほか、ブラウンベースのノスタルジックダイヤルものちに作られた。なお、こちらもラ・ショー・ド・フォンの国際時計博物館の永久展示品に認定されている。

なお、動画のなかで取り上げたのは磯貝氏のコレクションのごく一部だ。取材当日は紹介したコレクション以外にもたくさんの素晴らしい時計たちを見ることができた。せっかくなので、紹介しきれなかった時計についても簡単に触れておきたい。いずれも時計好きが羨むような魅力的な時計ばかりだ。

ハミルトン カーキ フィールド メカニカル 38mmに投入された3つの新ダイヤル

2025年05月14日

ハミルトンのある時計はほぼ完璧に近い存在だ。友人から“最初に選ぶべきいい時計”はなにかと聞かれた際、彼らの使用状況、予算、個性に基づいて選ぶことができるものであり、タフでアウトドア好きな“粗雑に物を扱う”友人には、38mmのハミルトン カーキ フィールド ウォッチをほぼ間違いなくおすすめしている。さらに重要なのは、ハミルトンが過去数年間でダイヤルカラーやケース仕上げの異なるオプションを増やし続け、個々のスタイルに合ったバージョンを見つけやすくしているということだ。先月、彼らはこのラインナップをさらに拡充させた。

38mmのハミルトン カーキ フィールド メカニカルについてのレビューは比較的短いものになると思う。というのもこの時計を何度も何度も取り上げてきたし、ブランドがブレスレットを追加した時にも話題にし、さらには私たちが限定版を作るほど愛している時計だからだ。多くの点で、これは典型的なフィールドウォッチであり、初めての、そして予算が限られた選択肢としても素晴らしい。そして普段購入する価格帯に関係なく愛用できるものでもあり、コレクションの中心となる可能性も秘めている。以下は(IWCスーパーコピー代引き優良サイトこの時計の)共通点である。

その名が示すように、ハミルトン カーキ フィールド メカニカル 38mmは直径38mmである。カーキ フィールド メカニカルには42mmバージョン(および異なる文字盤スタイルとレイアウトの自動巻きバージョン)もあるが、私の7.25インチ(約18.4cm)の手首と長身にもかかわらず、この38mmこそがフィールドウォッチの理想形であると確信している。オリジナルのカーキウォッチは33mmだったが、現代の好みは変化しており、38mmが最適なサイズであるようだ。

この時計の厚さは9.5mmで、防水性能は50mだ。防水性能が不十分だと嘆く人もいるかもしれないが、これはフィールドウォッチでありダイバーズウォッチではない。それでも湖に飛び込むくらいなら安心して使える。むしろあらゆる地上活動に適したハイカーや探検家のための素晴らしいオールラウンドウォッチだと考えている。頑丈であり、ほとんどの陸上活動にも耐えられる時計なのだ。

ブロンズケースは時間の経過とともに独特の風合いが出てくる、“経年変化”が魅力のひとつだ。チタン製の裏蓋は時計をダメージから守るが、時が経つにつれて時計が黒ずみはじめ、(Googleで簡単に検索すると)マーブル模様が出てくることがある。ケースを常にキレイに保ちたいと考えるタイプの人には、ブロンズ製の時計はおすすめできない。ステンレススティールモデルのほうは、サテン仕上げの頑丈なケースに加えて、ブロンズモデルと同じ20mm幅のドリルドラグが追加されている。新しい文字盤を持つモデルも、依然としてクラシカルかつ伝統的な選択であることに変わりはない。

Hamilton Khaki Field Mechanical 38
文字盤デザインはアウトドアの使用に適しており、毎正時には大きくて太いクラシックなアラビア数字、アウタートラックには分表示のハッシュマーク、文字盤内側には24時間表示の数字を配置した。また、夜光塗料を塗布した時間表示も備わっている。このデザインのルーツは、1964年に初めて発表されたアメリカ軍用規格MIL-W-46374までさかのぼることができ、同スタイルのフィールドウォッチの流れを築いた。ハミルトンがL.L.ビーンのカタログを通じてこれらの時計を出荷した時期を含め、異なる顧客やエンドユーザーへどのように適応させたか興味がある方は、ヴィンテージの歴史からこの文字盤とよく似たバージョンのコレクションをチェックして欲しい。

Hamilton Khaki Field Mechanical 38
ハミルトンのカタログにはすでに多数の文字盤とストラップの組み合わせがあり、今回新たにリリースされた3本によって合計12種類となった。本作の文字盤には、ヴィンテージ調のベージュ夜光インデックスと針が特徴の新ブルーダイヤルが含まれており、それにマッチするブルーのNATOストラップが組み合わされている。これは希少なヴィンテージの“ブルーアンカー”ハミルトン カーキをクールに思い起こさせるものだが、新しい文字盤は“ブルーアンカー”が退色してほぼ黒になってしまった色とは異なり、より鮮やかで明るいブルーの色調となっている。以下にその一例を掲載する。

Blue Anchor Field Khaki
アナログ/シフトが販売する“ブルーアンカー”

Hamilton Khaki Field Mechanical 38
ケース内には、ハミルトンの手巻き式H-50ムーブメントが搭載されており、約80時間のパワーリザーブを備えている。この小振りなケースには規格外のパワーリザーブを持つところは、手ごろな価格の時計としては大きなボーナスであり、価値があると感じている。確かにこれは精度の保証はないものの予算に優しい選択肢で、市場で最も信頼性の高いもののひとつだ。

Hamilton Khaki Field Mechanical 38
6月に発表されたほかのふたつの文字盤は、ホワイトダイヤルにブラックのテキストとヴィンテージ調のベージュ夜光を備えたブロンズケースのオプション(税込8万5800円のSSに対してプラス4万6200円というプレミアム)と、グリーンの夜光を持つSSケースの新しいホワイトダイヤルである。いずれの場合も、スーパールミノバはグリーンに光る。夜光の色が購入の決断に大きな影響を与えるという話は聞いたことがないが、タイトルが示すように、選択肢が増えることは悪いことではない...そうだろう?

Hamilton Khaki Field Mechanical 38
ハミルトン カーキ フィールド メカニカルについて非難できるポイントは、本当にふたつしかない。ひとつは、裏蓋に既に刻印が施されているために独自のテキストを追加できない点(私なら日付や個人的な意味を持つ文字を含んだ、擬似的な軍用発行番号を追加するだろう)。もうひとつは、多くの選択肢が提示されると決断麻痺に陥ることがあるという点だ。そのような人々にとって(私もそのひとりだが)、選択肢が多いことは必ずしもいいとは限らない。その場合、私は次のふたつの方法をすすめている。最初に目を引いたものを選び、ほかのオプションを検討しないこと。またはクラシックなブラック文字盤とSSケースの組み合わせを購入することである。

Hamilton Khaki Field Mechanical 38
正直なところ、どの時計を選んでも間違いない。まれに友人から“X”色の文字盤は“Y”デザインのケースで欲しかったと言われることがあるが、そのような組み合わせが存在しないこともある。しかしハミルトンはあらゆる顧客のニーズに対応するため、あらゆるバリエーションを揃えつつあるのだ。

ハミルトン カーキ フィールド メカニカル。直径38mm、厚さ9.5mmのブロンズまたはステンレススティールケース、50m防水。文字盤はホワイトまたはブルー、針はブラックまたはホワイト、スーパールミノバはベージュまたはグリーン。手巻きCal.H-50搭載、時・分・センターセコンド表示。パワーリザーブは約80時間。ストラップはマットブラウンのカーフレザーNATOストラップ、ブルーのテキスタイルNATOストラップ、またはブラックのテキスタイルNATOストラップ。価格はSSモデルが8万5800円、ブロンズモデルが13万2000円(ともに税込)

G-SHOCKファンとしての一面も持つ世界的な時計コレクターの視点をとおして、

2025年04月26日

G-SHOCKにおけるフルメタルモデルの歴史は、2015年に発表された“DREAM PROJECT DW-5000 IBE SPECIAL”から始まる。G-SHOCKとしては異例ともいえる高級素材の採用によって同モデルは大きな話題を呼んだが、その後にコンセプトモデルで考案された金属外装をステンレススティールに置き換えたレギュラーモデルの開発が進行する。そしてゴールドG-SHOCKを端緒とする進化形ORIGINは、G-SHOCK誕生の35周年にあたる2018年にGMW-B5000Dという形で結実。以降、フルメタルG-SHOCKがブランドの新たな柱となっていったのはすでにご存じのとおりだ。


 GMW-B5000Dは、1983年に登場したORIGINのデザインをフルメタルで再現するだけでなく、落下時の衝撃に耐えるファインレジン製の緩衝材を金属外装の下に備えている。この革新により、日本国内では古くからのファンはもちろん、デジタルウォッチに高級感を求める新たな層からも支持を獲得した。さらに、このフルメタルG-SHOCKの衝撃は海外の時計コレクターにも確実に届いていたようだ。そのひとりが、イタリア在住のコレクター、ジョン・ゴールドバーガー氏。世界中の時計愛好家の間で名を知られる存在であり、ヴィンテージウォッチを中心にコレクションを築いている彼がG-SHOCKの熱心なファンでもあるというのは、少し意外な一面かもしれない。


ジョン・ゴールドバーガー氏。世界的に著名な時計コレクター・研究者であり、ヴィンテージウォッチの専門家として知られる。代表的な著書に、『Patek Philippe Steel Watches』や『OMEGA WATCHES』などがある。

「G-SHOCKとの出合いは1989年のことです。当時の欧州において、カシオは腕時計ではなく電子計算機の分野で知られているメーカー。そのため、時計を扱っていたのは電気店でした。そこで手にしたAW-500は、アナログ×デジタルのコンビネーション表示や針の形状、つけ心地のよさなど、すべてが私の琴線に触れたのです。ひと目惚れでした」

 その後、ゴールドバーガー氏はAW-500の復刻モデルAW-500GD-9Aやユナイテッドアローズの別注モデルAWG-M520UAの入手を機に、G-SHOCKのコレクションを開始。G-SHOCK誕生40周年を記念して製作されたGMW-B5000PSやチタン製の外装にカモフラージュ柄を施したGMW-B5000TCFなど、近年のモデルからも充実したラインナップだ。

「私の父はエレクトロニクス関連の会社を経営していました。その彼から言われ続けた言葉に『イノベーションにこそ投資を続けるべき』というものがあります。私はヴィンテージウォッチを蒐集していますが、ウブロスーパーコピー 優良サイトG-SHOCKはそもそもがイノベーションが結実したプロダクト。今私の手元にあるのは、まさに父の教訓を体現したようなコレクションなのです」


ジョン・ゴールドバーガー氏が所有する、G-SHOCKコレクションの一部。

 フルメタルG-SHOCKの初作となるGMW-B5000Dが発売されたのは、ゴールドバーガー氏がAW-500に魅せられてから約20年が経過した2018年のことだ。


「発売されてからすぐに、フルメタルG-SHOCKのことを気に入りました。樹脂製の外装はどうしてもカジュアルなイメージを与えてしまいますが、メタルの外装は高級感もあります。加えて、加水分解とは無縁で持続性を感じさせてくれます。G-SHOCKがフルメタル化したことを知ったときには、喜びを感じました。いまやプラスティック製のクォーツウォッチで世界的に知られるスイスのブランドでさえも素材を見直し、生分解性プラスティックやセラミックを使うようになっている時代です。ちなみに、カシオは素材としていち早く植物由来の成分を使用したバイオマスプラスチックを採用していましたね。こうした点を踏まえると、カシオはやはり先進性があるメーカーなのだと思います。また、フルメタルモデルはつけ心地も樹脂製のG-SHOCKとはまったく異なるもので、新鮮な印象を抱きました」


2018年に初出となるフルメタルG-SHOCKの処女作、GMW-B5000D-1JF。

 ゴールドバーガー氏は発売直後よりフルメタルG-SHOCKを称賛していたものの、一方で周囲のコレクターやジャーナリストからのよいリアクションはあまり見られなかったという。

「GMW-B5000の登場時はまだ、彼らはフルメタルG-SHOCKの革新性や新しいイメージを理解していなかった。インフルエンサーやコレクターがソーシャルメディアを通じてフルメタルモデルの魅力を発信し始めたことで、ようやくその素晴らしさに気づいたのです。そもそもカシオは画期的な機能とそれをコンパクトにまとめる高密度実装技術、人間工学など、さまざまな観点から新しい可能性を切り拓いてきたメーカーです。とりわけ革新的なのが素材でしょう。時計のケースは装飾であるとともに、外部からの衝撃から中身を守る、鎧の役割を果たすエレメントでもあります。ステンレススティール製のモデルもそうですが、カシオは装飾性と耐衝撃性のバランスを取るのが非常にうまいメーカーです。また、時計の質感やデザイン、造形は使用される素材によっても決まります。たとえばコレクションのひとつであるGMW-B5000PSは再結晶化と深層硬化処理を施したステンレススティールを用いていますが、私はこうした最新技術を駆使した新素材にも非常に感銘を受けています」


 その第1弾となったGMW-B5000D-1JFについてゴールドバーガー氏は、「オリジナルのデザインを見事に再現した」点を高く評価しているという。それは5000シリーズではORIGIN以来長らく採用されなかったフラットベゼルをはじめ、ケースの複雑な造形やバンドに施されているディンプル、製造に手間のかかるスクリューバックなど、今もなお熱心なファンに支持される、初号機DW-5000Cの象徴的なエレメントだ。

「樹脂外装がもたらす軽快なつけ心地も、もちろんG-SHOCKの魅力でしょう。一方でGMW-B5000Dは金属製ならではの確かな重量感と、美しい光の反射が魅力だと感じています。それは、アナログモデルにおいてはアプライドのインデックスや進化し続けているダイヤル表現にも表れていますね」


 なかでも、ゴールドバーガー氏が特に魅了されたのがGM-B2100AD-2AJF。八角形のベゼルを備えた2100シリーズのフルメタルバージョンで、ダイヤルには鮮やかなメタリックブルーの蒸着を施したモデルだ。

「象徴的な八角形のベゼル形状もさることながら、G-SHOCK樹脂モデルのデザイン理念を反映している点が気に入っています。しかもインデックスには立体感があり、ケースは天面をヘアライン、斜面をミラーで仕上げていることで、機械式時計と見紛うようなエレガンスを放っているのも見事です。この光沢感は、フルメタルモデルならではのものですね。また、このモデルは日本のヴィンテージデニムとコーディネートしても映えそうです。メタリックブルーのダイヤルとも好相性でしょうから」


「フルメタルG-SHOCKはジャケットはもちろん、スポーティなスタイルにも、そしてタキシードでも着用できる時計だと思います。ヨーロッパの人たちは今も変わらず、エレガントなシーンでは頑なに機械式時計を手に取っています。しかしヘアラインとミラーの仕上げ分けやさまざまな素材を駆使するカシオの技術力が伝われば、フルメタルG-SHOCKが単に樹脂製の外装を金属に置き換えただけの時計ではないことが理解されるのではないでしょうか。クオリティにこだわる日本人らしさが、丁寧な表面処理に現れています。先日行われたアカデミー賞の授賞式でレッドカーペットを歩くスターの手首に光っていたのは、やはりクラシックな造形の時計ばかりでした。しかし近い将来、あのレッドカーペットでタキシードにG-SHOCKを合わせる人が現れてもおかしくはないと思っています」

 そして、フルメタルモデルのラインナップはなおも拡充を続けている。初号機のスタイルを継承する5000シリーズとORIGINをモダンにアップデートした2100シリーズを軸に、得意のCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザインを駆使しながら、カシオは新たな表現へのチャレンジを絶やすことはない。GMW-B5000D-3JFは文字盤にグリーンのガラス蒸着を取り入れることで目を引きつつも落ち着きのある表情に仕上げ、一方のGM-B2100AD-5AJFはダイヤルをライトカッパーで彩ることで柔らかな雰囲気を持たせている。どちらもフルメタルモデルに新鮮な表情をもたらすとともに、今後の表現も期待させるデザインワークだ。


上から、GM-B2100AD-5AJF、GMW-B5000D-3JF。

 アイコニックなデザインを踏襲しつつ金属外装をまとったフルメタルG-SHOCKは、間違いなく40年以上の歴史におけるターニングポイントであった。しかも複雑な造形を金属で再現したうえで面ごとの仕上げ分けも施し、G-SHOCKでありながら高級時計のようなクオリティを実現。樹脂製のカジュアルな時計というイメージはフルメタル化によって一転し、マルチパーパスかつ長きにわたって着用できるタイムピースへと昇華されたのだ。それはゴールドバーガー氏に代表されるヨーロッパの人々の心も掴み、今もなお世界に影響を広めつつある。

「樹脂製の時計を持続性のある金属で作り替えるというのは、とてもシンプルな発想です。しかし、非常に効果的なアイデアだったと思います。カシオはコンピューターの原点とも言える計算機の時代から、よりコンパクトなものを、より手に取りやすいものをというイノベーションを着実に形にしてきました。私はまだ写真でしか見たことがありませんが、当時製造されていた計算機にはとてもワクワクさせられます。このフルメタルモデルたちも、メーカーとして大切にしてきた革新の現れでしょう。また、手首につける計測機器としての進化もカシオには期待するところです。私のなかでは、腕時計といわゆるウェアラブルデバイスは異なるものだという認識があります。しかし、カシオは早くからエレクトロニクスと腕時計の融合に取り組み続けてきた数少ないメーカーです。魅力的なマテリアルを纏い、さらに未来的な機能を搭載した腕時計の開発に向けて、カシオにはこれからも技術を磨き続けて欲しいと願っています」